生涯教育こんちには。 ![]() 仮に日本で仕事をしながらMBAで勉強したい、などと会社の上司に言ったらどうでしょうか。 「君ね、仕事はそんなにあまくないぞ。残業の日をどうする気だ」とにらまれるかもしれません。 「君は他の会社に移るつもりなのか。ボクになにか不満があるのかね」とすごまれるかもしれません。 ウオルデンさんの会社は研究所のような頭を使う企業なので、仕事関係のトレーニングには積極的に協力してくれるそうです。 彼の会社はそうではありませんが、中には資金援助をしてくれる会社もあるそうです。 日本だったらお金を出してくれるかわり、卒業後は数年間のお礼奉公がまっているはずですが、アメリカにはそういうことはあまりないそうです。 企業がMBAの勉強に協力的であることは、ウオルデンさんにとって非常にラッキーと言えます。 日本には残念ながらこういうタイプの会社や企業は少ないと思います。 第2に会社の仕事と大学への通学をどのように組み合わせているのでしょうか。 日本のように残業、残業で毎晩9時ごろまで会社に残らなければならない状況では、会社の後で大学に行くなど思いもよりません。 ウオルデンさんの会社は、残業がほとんどありません。 それに残業をしてもお金を払ってくれませんから、会社で仕事をしても意味がありません。 残業的な仕事はそれぞれが家に持ち帰ってやってくるのだそうです。 この点でも研究所のような性格の会社です。 自分で自分のスケジュールを立てることができますので、会社がひけてから大学に行けるのです。 会社がとても忙しいときは授業を犠牲にして、会社の仕事をするそうです。 この点、会社第1主義です。 アフターファイブは俺のもの、会社にものを言わせない、という態度と違います。 彼は仕事と勉強のバランスをとっているのです。 会社が終わってから大学に行く場合、距離が遠いと通うのは難しいです。 彼の家から会社まで車で5分、会社から大学まで20分、大学から家まで20分と、すべて20分以内の距離にあるのです。 偶然ではなく、はじめから作戦的に近くの大学を選んだのです。 第3に、授業料をどうするのでしょうか。 多くの学生のように学生ローンに頼るのでしょうか。 奥さんのアルバイトに頼るのでしょうか。 ウオルデンさんは自分のポケットから出しています。 それもそのはずです。州立大学を選んだので、州民は非常に安い授業料で大学の単位をとれるのです。 州立大学は州民の税金で運営されているので、納税者は安くなるのは当然です。 第4に、MBAに入るのに難しい入試があるのでしょうか。 GMAT(Graduate Management Admission Test)という3時間のむずかしい標準テストがあるそうです。 内容は英語、数学、エッセイだそうです。 その点数を志望の大学院に提出すると選抜プロセスがあり、合格、不合格が決まります。 彼は近くの州立大学を選んだので、難なく入れました。 授業に出てみると、自分が一番「高齢者」だそうです。 だいたいは20才代の学生たちです。 でも、社会人であることは不利なことばかりでなく、実務経験のあるほうがよく理解できる科目もあるそうです。 ウオルデンさんのように会社で頭を使う仕事をしていると、大学院のクラスに出ても違和感はぜんぜんありません、ということです。 まだまだ頭がシャープなのです。 それにアメリカの大学は、いったん社会に出た人も戻ってきて必要な学位や科目の履修に開かれているのです。 社会人になっても、大学にもどって自分のスキルを伸ばすことができるのです。 日本のように大学が閉鎖的で社会人は非常に再入学しにくい、というのでは、再教育の場所が限られてしまいます。 日本のニュースアンカーの安藤優子アナウンサーは大学院で聴講して勉強しているそうですが、例外的なケースです。 日本は高齢者社会といわれているのですから、「高齢者予備軍」の再教育をして、頭をシャープにして「能力上の高齢者」を減らすことを考えたらいいと思うのですが、どうでしょうか。 第5に、子供たちが小さいとお父さんが勉強で始終家を開けては困るのではないかというと、子供たちは3人いて、一番若い子が大学生になって家から出たので、手がかかる子供は家庭にはだれもいません。 奥さんのパットさんも中学校のパートの教師という自分の仕事をもっているので、ご主人が夜学校へ行ってしまって孤独に悩むということはなさそうです。 むしろ積極的にご主人の勉強を応援しています。 ただ、試験やペーパーの時期になると、家事は後回しにされて、学校のことが優先するのは若い学生さんたちと変わらないそうです。 第6に、夫のウオルデンさんと妻のパットさんの二人ともセミプロあるいはプロの音楽家なのです。 ウオルデンさんはバイオリンで、奥さんはピアノで伴奏して、hillbilly music と呼ばれる早いダンスの曲を演奏するのです。 その実力はかなりのものらしく、CDも出していますし、ウエブサイトもあります。 http://www.charliewalden.com を開くと音楽家としてのウオルデンさんの顔があります。 ちょっとのぞいてみると、Charlie Walden began playing fiddle at age 11 when inspired by players in a fiddler’s contest at the Boone County Fair in his native Missouri. With the generous help and encouragement of older master fiddlers he went on to be recognized as one the best Missouri old-time fiddlers of his day. He has won dozens of local fiddle contests as well as major championships in Missouri, Illinois and West Virginia. ええー、こんな大物だったとは。 我家から歩いて5分で行ける所で住んでいるご近所さんなのに、自分の音楽のことを口にされないので、知らなかったのです。 サラリーマンとしてのウオルデンさんよりこちらの顔の方が迫力がありそうです。 そういえば、1月に彼の誕生日に招待されて行ったとき、集まってきた人々はバイオリン、ギター、マンドリンなど、もちよってにぎやかなダンスの曲を演奏していました。 興味のある方は上のウエブサイトを開いてみてください。 たくさんの音楽の情報が載せられています。CDも販売されています。 第7に卒業後どうするのか、と聞きましたら、今の会社で満足しているので、続けて働きます、とのことでした。 そしていつの日か、法律大学院に通って、弁護士の資格も取りたいと思っているということです。 いつだったか、ABC7チャネルのニュースのアンカーのジョンデイリーさんが「今日が最後です」、というので、退職か、と思いましたら、彼はアンカー働きながら法律学校に通い、すでに弁護士試験をパスして、テレビのニュースのアンカーの仕事の後は、弁護士の仕事を始めたのでした。 アメリカには仕事に関して、2毛作、3毛作の人生を送る人は少なくないのだと思いましたが、ウオルデンさんもMBAを終わって、法律学校へ行って、また別の世界で生きるのかもしれません。 最後に、もし、1年間有給休暇が取れたらご夫妻で何をしますか、とたずねますと、ウエストバージニアの音楽キャンプに参加したい、ということでした。 二人の正体はやはり音楽家のようです。 インタビューを終わって、社会人の再教育から見ると、アメリカ社会の勉強への自由さ、大学への社会人への開放性、企業の個人への協力、家庭の協力、子供の教育だけでなく、親も自分の趣味を大切にする生き方、そして、人生を楽しんで生きていく、というアメリカ中流社会の底力を見せられたような気がしました。 日本はいつこんな自由な社会になれるのか、とため息がでました。 最後に彼のジャパンコネクション。 あるとき私の日本語のクラスに学者のような風采の中年の紳士が現れました。 この人はいったい何者なのだろうか。 声がいいから声楽家か、アナウンサーなのか、よく勉強するから学者なのか、と考えてみるのですが見当がつきません。 また、偶然にも我家の近所で私達の親しい友人の同僚だったです。 日本語クラスの課題の日記をみると、毎日バイオリンを弾いている、とありますから、バイオリニストのようですが、仕事は何とか研究所と言いますので、ますますわからなくなり、正体不明の紳士でした。 しかし、忠実にクラスに来られたのでだんだん分かってきました。 この紳士は日本に親しい友人がいて、いっしょに野球を見に行くのです。 わーと声をあげて声援する日本の野球が大好きなのです。 日本人野球ファンの目がアメリカの大リーグに行ってしまう中で、日本の野球に目を向けるアメリカ人紳士がいたのです。 日本の野球を理解したいので、私の日本語クラスに来たのです。 日本の千葉ロッテマリーンズの監督が涙を流して喜びそうなニュースです。 奥さんのパットさんは、東京ヤクルトスワローズの大ファンです。 この9月にも友人の誕生日に日本に行くそうです。 友達とロッテの試合を野球場で声援している「変なアメリカ人」がいたら、このウオルデンさんです。 もし彼の日本語が良かったら彼のおかげです、もし日本語が悪かったら、私のせいになります。 だって彼は頭が良いうえに、さらに忠実に私の日本語クラスに来ていました。 NBAの勉強が終わったら、また日本語の勉強をして将来はバイリンガルになりたいと、いつまでの夢を持ち続けるのが、彼の若さの秘訣かもしれません。 次回も新しい出発を始めた人を紹介します。楽しみにしてください。 |